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皆既日食

黒い太陽が浮かぶ中国武漢市内

皆既日食中に浮かぶ黒い太陽。その間、一体周りはどのくらい暗くなるのか?

これはなかなか言葉で伝えるのが難しい問題。というのも、同じ光景は皆既日食でしか再現されないからだ。

「日没後どのくらい経過した感じですか?」と聞かれても、実に答え辛い。普通の日没は、西の空が茜色に染まり、薄暮とともに次第に闇に変わっていく。皆既日食の場合は、地平線が360度夕焼けに染まる。ここからして普段の日没後とは全く違う。

実際にその場を体感しなければ、この感覚はわからないもの。だからこそ、人は黒い太陽をその目で見るために、時間とお金と労力を投入し世界各地に遠征していくのかもしれない。映像や画像はその数パーセントも表現できないことは、現場にいればよくわかる。それが皆既日食というものだ。

黒い太陽 2009

望遠鏡メーカー大手のビクセンで、例年の7000倍もの日食グラスが売れたというTVニュースが流れていた。多くの日本人がその瞬間に思いをはせ、鹿児島へ、沖縄へ、そして中国へと、黒い太陽を見上げる場所をもとめて旅立った。しかし残念ながら、国内外の多くの場所で、あいにくの天候に見舞われてしまった。

弊社は、ハイビジョン生中継の仕事のため、中国武漢でその日の朝をむかえた。前日までの暑さが嘘のような涼しい朝だった。第一接触から第2接触までの時間が、実際よりもかなり長く感じられる。太陽が爪先のように細くなっても、それほど興奮しないのが自分でも不思議だった。そしてむかえた9時24分…。

スーッと光が闇に吸いこまれていく。

そして天空に黒い太陽が現れた。

ハイビジョンカメラの撮影を担当していたため、直接肉眼でその様子を見ることはできないが、人々のどよめきと吹き抜ける風が、僕の鼓動を一気に早める。

黒い太陽の輝く空・・・。あたりは不思議な夜。地平線が360度夕焼けとなり、いつのまにか町中の街灯が灯っていた。

やがて、その暗い天空を切り裂くように、まさに針の先で刺したような鮮烈な光が一気に広がっていった。

第3接触のその瞬間、僕はファインダーから目を離し、幸運にも肉眼で見上げることができた。

これほど自然の光景で興奮したのは久しぶりなことだった。

食分99%と100%の違いはあまりに大きい。金環食もしかり、だ。

次回は、来年、イースター島で皆既日食が見られる。モアイ像と黒い太陽を同時に撮影できるという特殊な条件がそろう。

徐々に大きくなる太陽を見ながら、すでに気持ちは来年のイースター島へ飛んでいた。

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