超高感度撮影テクニック

ペデスタルドリーを使ったスタジオ運用

映像プロデューサー:竹本宗一郎(ZERO CORPORATION

ネイチャー撮影用スーパー超高感度カラーテレビカメラNC-R550nは、圧倒的な超高感度特性と色再現性を有しながら重量わずか2kg。小型・軽量の特殊カメラとして世界各国のフィールドロケでENG運用され、これまで誰も目にすることができなかった映像を次々にとらえてきた。一方、スタジオ収録でNC-R550nを運用するときは、ENGとは少し違ったセッティングが行われる。そのひとつがペデスタルドリーをつかった撮影だ。

ペデスタルドリー(Pedestal dolly)でスタジオカメラに

TV番組のスタジオ収録で多用されるペデスタルドリー。 主にフラットな床面を持つスタジオで常用する大型のドリーシステムだ。通常のビデオ三脚でも脚先にキャスターを装着し簡易的なドリーシステムを組むことができるが、キャスターの方向が固定できないため正確に一方向へ移動させるにはレールなどを併用しなければならない。
しかしペデスタルドリーは、大型のステアリングをカメラマン自身が操舵することでドリーの進む方向を自由に制御・固定でき、高さ調節もフリークランプで運用が可能。スタジオ収録や中継などで活躍する架台のひとつだ。

NC-R550nをペデスタルドリーに搭載するには、アダプタープレートを併用すると便利だ。
NC-R550nの底部には、1/4インチのカメラ用ネジ穴と、固定用のダボ穴が用意されている。1/4インチのネジ穴は、主にスチル三脚用の規格のため、そのままでは放送用ビデオカメラのフネに搭載できない。そこでPROTECHの三脚アダプタープレート「ST-1」をNC-R550nの底部に装着。こうすれば、Vinten(ビンテン)やSachtler(ザハトラー)などのビデオカメラ雲台にもフネを介して直接装着できるようになる。ペデスタルドリーでの運用はもちろん、通常のビデオ三脚にでも多用できるアイテムだ。
先日、科学情報バラエティー番組のスタジオ収録でNC-R550nを運用することになった。 Sachtler(ザハトラー)のVideo18をセットしたペデスタルドリーに、三脚アダプタープレート「ST-1」を介してNC-R550nを搭載。これで他のカメラ同様、スタジオのセット内を自由に移動しながら番組の収録に加われるというわけだ。
この撮影では、NC-R550nのアナログコンポーネント出力から専用ケーブルでHDへのアップコンバータへ接続。他のHDカメラと整合性をとりながら、サブからのスイッチングで収録するシステムで運用された。

情報番組のスタジオ収録に最適なASCモード

HARP方式超高感度撮像管やI.I.(イメージインテンシファイア)などの撮像管を使った超高感度カメラは、視野の中に明るい光源があると焼き付きを起こしてしまうため、安定した微弱照度環境下での運用が条件になる。スタジオ収録で使用する場合には、スタジオ全体をその環境においてから撮影をはじめなくてはならないため、挿し込み映像の扱いをとるしかない。
一方、基本的には焼き付きの心配がない3板式EMCCDを搭載したNC-R550nは、他のスタジオカメラと同条件環境でも運用が可能。NC-R550nに搭載するASC(自動感度切り替えモード)を使えば、例えば、他の放送用カメラに必要な照度から徐々に照明を落としながら暗室状態になるまで、大きく照度を変化させる過程をシームレスに映しだすことができる。これは、スタジオでの生放送でも超高感度カメラが他のカメラと同時運用できることを意味する。
フィールド撮影だけでなく、スタジオ収録でも運用可能なNC-R550n。照明を落としたスタジオで、出演者がNC-R550nが映しだす超高感度映像をリアルタイムで見ながら、さらにもう一台のNC-R550nでタレントの生のリアクションをとらえる、という使い方もでもますます活躍しそうだ。

著者プロフィール

竹本宗一郎(映像プロデューサー)

1968年東京生まれ。1991年大阪芸術大学芸術学部卒業。 東京吉祥寺の映像制作会社ZERO CORPORATION代表取締役。自然をフィールドにした様々な映像を制作。特に超高感度カメラによる天体撮影に精通し、CMや番組、科学館、博覧会など向けの映像を手がける。また月刊天文ガイド「ASTRONOMY VIDEO」連載のほか、「天体ビデオ撮影マニュアル」「天体ビデオ撮影入門」や「コンパクトデジタルカメラで野鳥を撮ろう!」などの著書も執筆。 業界では稀なナイトネイチャーカメラマンとして活躍中。

◇ このコンテンツは「スーパー超高感度カメラNC-R550aシリーズ」のウェブサイトに掲載されたものです。なおNC-R550aシリーズは2013年8月末を持ちまして販売を終了いたしました。