超高感度撮影テクニック

満天の星空を舞うホタルをとらえる

映像プロデューサー:竹本宗一郎(ZERO CORPORATION

第4回の「ウミホタル」に続いて、他の発光生物でもネイチャー撮影用スーパー超高感度カラーテレビカメラ「NC-R550n」フィールドスーツシステム試作機による撮影を試みた。
今回被写体として選んだのは、ゲンジボタル。しかも星空と同時に映像化するという企画。星空を舞うホタルの映像となれば、ほとんど目にしたことがない貴重な映像となるはずだ。

星空を舞うホタルを探して

「星空を舞うホタル」を撮影する、と一言でいっても簡単ではない。 最も重要なのは、必要な条件を満たしてくれるロケーション選びだ。美しい星空が広がっている山間部、かつ自生する自然のホタル。しかも“高く飛ぶホタル”が生息する場所を特定しなければならない。ホタルの発生条件には気温も関係してくる。低温では活動が鈍って高く舞わないからだ。また、本来は月を照明がわりにして風景とともに撮影したいところだが、月明かりが大きいとホタルはあまり舞わなくなってしまう。さらにホタルが乱舞する時間は日没後数時間という条件の厳しさだ。
リサーチを終えた7月下旬のある日、フィールドスーツシステムを装着したNC-R550nを持って、標高1000mを超えるとある高原を目指した。

フィールドスーツとともに山の清流へ

フィールドスーツシステムが便利なのは、必要な機材がコンパクトに収納できるようになるところ。
13倍レンズを装着したネイチャー撮影用スーパー超高感度カラーテレビカメラ「NC-R550n」一式をHDV用のソフトバックに入れ、ショルダーを利用して右肩にカメラ機材、左肩に三脚というスタイルで、撮影現場まで足を急いだ。

日没からホタルの乱舞まではおよそ1時間あまり。覆い茂る木々が頭上部分で適度に開け、ホタルが頭上高く飛翔し、なおかつなるべく奥行方向を狙える場所にNC-R550nをセットした。奥行方向のロケーションが大切なのは、乱舞するホタルの数を1画面でなるべく多くとらえるためだ。また、撮影中にも暗闇をキープする必要があるため、フィールドスーツに装着した液晶モニターにもカバーをかぶせ、じっくりとその時を待った。

うっそうと茂る木々の中を流れる小川…。薄明で浮かび上がるその風景の中に、ひとつ、またひとつとホタルが光だす。満天の星空が輝きだす頃、やがて1匹のホタルがふわりと夜空に向かって飛び立った。星空と同時にホタルの光跡をとらえるには、GAINアップとストレージ(フィールド蓄積)調整のバランスが重要となる。2フィールド程度でも十分ホタルの光をとらえることができるが、真っ暗な木々の雰囲気も背景として同時に欲しかったため、8フィールド前後に設定。事前の構想に近い映像を撮影することができた。

星空を舞うホタルたち

最後に、今回撮影した星空を舞うホタルの映像をギャラリーにてお楽しみいただこう。
フィールドスーツシステムによって、ロケ現場での単独運用を可能にしたNC-R550nの可能性をお伝えできれば光栄だ。

星空を舞うホタル(ビデオギャラリー) ≫

著者プロフィール

竹本宗一郎(映像プロデューサー)

1968年東京生まれ。1991年大阪芸術大学芸術学部卒業。 東京吉祥寺の映像制作会社ZERO CORPORATION代表取締役。自然をフィールドにした様々な映像を制作。特に超高感度カメラによる天体撮影に精通し、CMや番組、科学館、博覧会など向けの映像を手がける。また月刊天文ガイド「ASTRONOMY VIDEO」連載のほか、「天体ビデオ撮影マニュアル」「天体ビデオ撮影入門」や「コンパクトデジタルカメラで野鳥を撮ろう!」などの著書も執筆。