超高感度撮影テクニック
Bioluminescent Bay〜真夜中の青い海を撮る〜その1』
Bioluminescent Bay(バイオルミネセント・ベイ)という言葉を聞いたことがあるだろうか?
この言葉は、世界各地に存在する“光る湾”を意味している。
カリブ海、プエルトリコにヴィエケス島という人口9000人余りの小さな島がある。
この島のモスキート湾では、夜になると不思議な光景が見られるという。 人々はその湾をこう呼んでいる… 「Bioluminescent Bay(生物発光湾)」。
ピロディニウム(Pyrodinium)の青い海
ピロディニウムは、外的な刺激を受けると発光現象を起こすことで知られるプランクトン。世界各地に生息しているが、なかでもヴィエケス島のモスキート湾は、ピロディニウムが極めて高い密度で生息する、世界的にも稀な場所だ。そのためモスキート湾は、夜になると青い光を放つというのだ。
青く光る海・・・
これまで世界各国のTVクルーが様々な機材を持ち込んで、この青く光る湾の撮影に挑んできた。しかし、ピロディニウムの淡い光のディテールを忠実に撮影することはできなかったといわれている。しかも近年、地球温暖化による海水温上昇によってピロディニウムは絶滅の危機に瀕し、『青く光る海』を見ること自体が難しくなってきたというのだ。
WOWOW初の大型ドキュメンタリースペシャル
今回、WOWOW初の大型ネイチャードキュメンタリー番組『3原色の海へ〜太古の海が語る未来へのメッセージ〜』で、撮影困難といわれる“青く光る海”に挑むことになった。
WOWOWは、ご存じのようにハイビジョン放送によるクオリティーの高い番組を提供する有料放送局だ。また「世界ウルルン滞在記」や「世界ふしぎ発見!」をはじめ、数々のドキュメンタリー番組制作で定評のあるテレビマンユニオンが番組制作を担当。そしてこの困難な撮影に挑むために白羽の矢が立ったのが、ネイチャー撮影用スーパー超高感度カラーテレビカメラ「NC-R550n」だった。
SDフォーマットであるNC-R550nの映像をハイビジョンへアップコンバートした場合、はたしてWOWOWが望むクオリティーを維持できるかどうか、そしてなにより、青く光る海を映し出すだけのパフォーマンスを本当に持っているのかどうか、我々はまずはその検証からはじめることにした。
著者プロフィール
竹本宗一郎(映像プロデューサー)
1968年東京生まれ。1991年大阪芸術大学芸術学部卒業。 東京吉祥寺の映像制作会社ZERO CORPORATION代表取締役。自然をフィールドにした様々な映像を制作。特に超高感度カメラによる天体撮影に精通し、CMや番組、科学館、博覧会など向けの映像を手がける。また月刊天文ガイド「ASTRONOMY VIDEO」連載のほか、「天体ビデオ撮影マニュアル」「天体ビデオ撮影入門」や「コンパクトデジタルカメラで野鳥を撮ろう!」などの著書も執筆。