超高感度撮影テクニック

NC-R550aが流星の光度分布図を書き換える!?

映像プロデューサー:竹本宗一郎(ZERO CORPORATION

8月23日に放送予定のABCこども未来プロジェクト特番『夢を感じる小学校』。8月下旬に美星天文台で行われたロケでは、天体撮影用スーパー超高感度カラーテレビカメラ「NC-R550a」を使い季節外れの流星撮影に挑んだ。

NC-R550aでは、これまで何度も流星のカラー動画撮影に成功しているが、ロケが行われたのは8月下旬。あいにく8月13日前後にピークをもつペルセウス座流星群もすでに活動が終わっている時期。今回の撮影では、出現数を稼げない「はくちょう座流星群」の火球を狙うか、朝方の「散在流星」にわずかな期待をかけるしかない状態だった。

望遠鏡流星分野で注目されるNC-R550a

ところで「望遠鏡流星」という言葉を聞いたことがあるだろうか?
望遠鏡を覗いていると、極稀に暗く短い流星が視野を横切ることがある。それが「望遠鏡流星」と呼ばる肉眼では到底確認できない微光流星だ。流星の明るさの分布を調べてみると暗い流星ほど数が多いことが分かる。6等星前後に光度分布のピークが見られるといわれているが、この暗い流星の観測は、人間が双眼鏡を覗きながら目視で行う特殊な分野だ。従来のスチルカメラや従来の高感度ビデオカメラでは、この「望遠鏡流星」を可視化することは困難だったからだ。

実はこの分野でもNC-R550aによる記録・観測が注目されている。
肉眼で見えた流星は、ほぼすべて動画として撮影可能な性能をもつこのスーパー超高感度カラーテレビカメラNC-R550a。これに放送用ズームレンズを組み合わせることにより、4等星以下の暗い流星も記録・観測することが可能になるのだ。

流星撮影における画角判断の難しさ

流星の撮影で難しいのは、なんといっても画角の判断だ。広角レンズを使えば夜空の広いエリアをカバーできるが、明るい流星でも小さな発光体としてしか映像表現できない。一方、焦点距離を長くすると画角が狭くなり、流星が撮影エリアを通過する確率が格段に低くなってしまう。活発な流星群の活動も期待できない悪条件の中で下した今回の判断は、後者の方だった。

ABCこども未来プロジェクト特別番組『夢を感じる小学校』の流星ロケは、スケジュールの都合で再撮影の日程調整はできない状況だった。流星が少ない時期であるとともに、天候も神頼み。そこで2台のNC-R550aを用意したうえで、リスクテイクすることにした。1台は標準的な画角で神頼みとなる明るい流星を狙い、もう一台は望遠側にシフトした画角をとり、出現数の多い暗い流星を撮影しようという作戦をとった。

暗い流星でもカラー動画撮影が可能

流星の撮影といえばスチルカメラで行うのが一般的だ。しかしスチルカメラでは、肉眼で見えた流星の中でも特に明るくゆっくりとした動きのものしか写すことができない。しかしNC-R550aなら暗く早い流星もカラー動画で撮影できる画期的な観測機器といえる。

夜空を覆っていた雲が急速に流れ始めたのは夜半過ぎのこと。この時点で半分の時間をロスしていることになる。今回の撮影では、NC-R550aのコンポーネント出力からHD-SDIへ変換し、アップコンバートしたHD信号をHDW-250(HDCAM)で収録するシステムを組んだ。

暗い流星の活動分布を書き換える可能性

撮影を開始して間もなく、スタッフ一同、狙いが的中したことを実感することになる。望遠側にシフトした画角をとったカメラには、暗く早い流星が次々と映し出される。流れる方向と速度、さらに色の変化から、ペルセウス座流星群と思われる流星が多く出現していた。
通常ペルセウス座流星群の活動期間は8月20日前後までだが、今回の美星天文台ロケを敢行したのは8月下旬。今回は番組収録がメインだったため、詳しい観測や分析は行えなかったが、今後NC-R550aが流星の光度分布図を書き換える可能性があると感じさせる出来事だった。さらに幸運にも、広い画角のカメラでもいくつかの流星をとらえることができた。

たむけん先生とともに流星を見上げた子供たち。何を感じ、どんな想いを抱いたのだろうか?
結果は、番組の放送をお楽しみに!

番組放送予定『ABCこども未来プロジェクト』
番組名
『夢を感じる小学校』
放送日時
2009年9月23日(火・祝)16:00〜17:54
放送局
ABC朝日放送(関西のみ放送)
番組案内
http://asahi.co.jp/kodomo/

著者プロフィール

竹本宗一郎(映像プロデューサー)

1968年東京生まれ。1991年大阪芸術大学芸術学部卒業。 東京吉祥寺の映像制作会社ZERO CORPORATION代表取締役。自然をフィールドにした様々な映像を制作。特に超高感度カメラによる天体撮影に精通し、CMや番組、科学館、博覧会など向けの映像を手がける。また月刊天文ガイド「ASTRONOMY VIDEO」連載のほか、「天体ビデオ撮影マニュアル」「天体ビデオ撮影入門」や「コンパクトデジタルカメラで野鳥を撮ろう!」などの著書も執筆。 業界では稀なナイトネイチャーカメラマンとして活躍中。

◇ このコンテンツは「スーパー超高感度カメラNC-R550aシリーズ」のウェブサイトに掲載されたものです。なおNC-R550aシリーズは2013年8月末を持ちまして販売を終了いたしました。