超高感度撮影テクニック

CM制作における超高感度特殊撮影 低残像型デジタルノイズリダクション機能の有効性

映像プロデューサー:竹本宗一郎(ZERO CORPORATION

2009年夏。 ネイチャー撮影用スーパー超高感度カラーテレビカメラ「NC-R550n」を使ったTVCMのスタジオ撮影が行われた。
今回のCM撮影は、ある生物の発光現象と人物を同時にとらえるというミッションだった。

ホタルなどの生物発光現象は、実は思いのほか明るい。通常のテレビカメラでもゲインアップ機能を利用することで、発光自体はなんとか映る。しかし通常のカメラでは、ゲインアップによるノイズ感は非常に醜く、さらに問題なのは「ホタルの光しか映らない」ということ。そのままではノイズの中で緑色の点が舞うだけの映像になってしまう。

NC-R550nの最も優れた点は、超高感度撮影時でも優れた色再現性と高S/Nを実現していることだ。これによりノイズ感の少ない極めて高画質な撮影が可能となっている。
高感度カラーCCDや単板式EM-CCDを搭載した高感度カメラは多数存在するが、これだけの高いS/Nを実現した3板式EM-CCDカメラは、NC-R550nだけだ。SD出力というフォーマットによる制限はあるものの、その圧倒的な超高感度特性は、いくつものTV番組の撮影でも実証済みだ。

今回のプロジェクトは地上波CMの撮影ということで、可能な限りクオリティ担保が求められる。さらに、生物発光現象だけでなく出演者との絡みも重要な要素であるため、人物のディテール表現と生物発光現象を同時にとらえるという難度の高い撮影だった。

NC-R550nは、その圧倒的な超高感度特性はもちろん、カメラの内部設定を細かくマニュアル調整できる点も見逃せない。
可能な限りノイズ感を無くしながら、人物のディテール表現を含め十分な光量を確保した撮影を行うには、ゲインとストレージの細かなバランス調整はもちろん、低残像型デジタルノイズリダクション機能をうまく組み合わせることで実現可能だ。

NC-R550nには、残像の発生しないフィールド内デジタルノイズリダクションのほか、動き適応のフレーム巡回型ノイズリダクション機能を搭載している。これらのノイズリダクション機能を絶妙に組み合わせることで、TVCMのクオリティを保つノイズの少ない鮮明な映像を撮影することができるのだ。

今回撮影したTVCMは現在オンエア中。NC-R550nによるノイズ感の無いその映像は、それが特殊撮影であることを全く意識しない仕上がりとなっている。いったいどのCMなのか、もしも気付くことができたら、ぜひ唸ってほしい(笑)。

著者プロフィール

竹本宗一郎(映像プロデューサー)

1968年東京生まれ。1991年大阪芸術大学芸術学部卒業。 東京吉祥寺の映像制作会社ZERO CORPORATION代表取締役。自然をフィールドにした様々な映像を制作。特に超高感度カメラによる天体撮影に精通し、TVCMや番組、科学館、博覧会など向けの映像を手がける。また月刊天文ガイド「ASTRONOMY VIDEO」連載のほか、「天体ビデオ撮影マニュアル」「天体ビデオ撮影入門」や「コンパクトデジタルカメラで野鳥を撮ろう!」などの著書も執筆。 業界では稀なナイトネイチャーカメラマンとして活躍中。

◇ このコンテンツは「スーパー超高感度カメラNC-R550aシリーズ」のウェブサイトに掲載されたものです。なおNC-R550aシリーズは2013年8月末を持ちまして販売を終了いたしました。