超高感度撮影テクニック

天体ビデオ撮影用スーパー超高感度カラーテレビカメラNC-R550a誕生

映像プロデューサー:竹本宗一郎(ZERO CORPORATION

2006年、NECは超高感度撮影を可能にする画期的なデバイスEM-CCDを搭載した3板式スーパー超高感度カラーテレビカメラNC-R550を発表した。NC-R550は、微弱光下でのカラー動画撮影が可能という特徴を生かし、監視、報道、研究、観察などの市場に向けて開発された業務用カラーテレビカメラモジュールだ。さらにこのカメラは、大型望遠鏡やプラネタリウムのメーカーである五藤光学研究所の手によって天体ビデオ撮影用にモディファイされ、“NC-R550a”として新たな称号とステージを与えられた。

天体ビデオ撮影における超高感度撮影

これまで天体ビデオ撮影に用いられてきたビデオカメラの多くは、防犯・監視用カメラや民生用DVカメラなど。さらに高い感度を得るためには、イメージ・インテンシファイア(以下、I.Iという)と呼ばれる光増幅光学装置(イメージ増倍管)をカメラに装着する方法がアマチュア天文家の間でも行なわれてきた。I.IをDVカメラのレンズ前に装着することで、微弱な光を100倍〜10000倍に増幅し肉眼以上の感度で夜空を撮影できるようになるというものだ。しかし残念ながらI.Iではカラー映像は得られない。すばる望遠鏡用にNHKが開発した超高感度ハイビジョンカメラも、実はI.Iをつかっている。ところがTVで放映された映像はすべてカラーの映像だ。放送用のビデオカメラには、R・G・B各色用に3つのCCDが組み込まれており、このハイビジョンカメラではそれぞれのCCDの前にI.Iチューブを貼り付け、カメラ内部でカラー映像化しているのだ。この方式はI-CCDと呼ばれている。

新世代超高感度デバイスEM-CCD

そんななか新たな超高感度デバイスとして注目されているのが、EM-CCD(Electron Multiplying CCD)と呼ばれる撮像素子だ。映像を撮影する際に使用するデバイスには、真空管などの撮像管と、CCDやCMOSなどの撮像素子がある。撮像管は事前の充分なヒーティングが必要だったり、強い光が入ると焼き付をおこしたりと使い勝手は良くない。一方、撮像素子はそういった心配も無く取り扱いが非常に楽だ。EM-CCDは、その名の通り撮像素子の一種となる。I.Iは解像度が低く、またノイズも一緒に増幅されてしまう。しかしEM-CCDでは、CCDチップに電子増倍機能を搭載することで、読み出しノイズを増やすことなく信号を数千倍まで増幅することができる低ノイズ・高S/Nを実現した画期的な撮像素子なのだ。

NC-R550aの最大の特徴

天体ビデオ撮影用スーパー超高感度カラーテレビカメラNC-R550aの最大の特徴は、新世代超高感度デバイスEM-CCDを使った3板式テレビカメラであること。これまでもEM-CCDを搭載した単板式カメラは発売されていたが、感度や解像度、色再現性の面で3板式は圧倒的に有利なのだ。また、NC-R550aが天文ビデオ撮影用の超高感度カメラを謳っている理由が2つある。各EM-CCDをペルチェ方式でマイナス20度まで電子冷却し、天体ビデオの超高感度撮影時におけるノイズ低減を行なっていること。そして最大の特徴はなんといってもNC‐R550aは、天体撮影に必要なHα線(波長656.3nmの光)を透過させ、なおかつ紫外線や赤外線をカットする天体ビデオ撮影専用の特殊な干渉フィルターを内蔵し、a(astronomy=天文学)を冠したモデルとして、HAP(Hα pass)モードというフィルターモードを搭載している点だ。これにより、HU領域の散光星雲が放つ赤い光をはっきりととらえることができる。天体ビデオ撮影には必須の機能といっても良いだろう。

NC-R550aで夜空の臨場感を共有する

黒く四角いその無骨なデザインの中に秘められた天体ビデオ撮影に最適化された機能の数々。NC-R550aを夜空に向けたとたん、だれもが驚嘆の声を上げる。これまでNHKの超高感度カメラでしかとらえられなかった映像が、いとも容易くモニターに映し出されるからだ。このNC-R550aスペシャルWebサイトでは、今後NC-R550aを使ったさまざまな超高感度撮影テクニックとNC-R550aの可能性をご紹介していく予定だ。天体ビデオ撮影はまだ生まれたてのジャンル。NC-R550aの登場によってその撮影スタイルが大きく変化することだろう。NC-R550aによって多くのユーザーが天体ビデオ撮影の魅力と楽しみを知り、あなたが撮影した動画映像を通して多くの人たちにその喜びと感動を共有し伝えていただきたいと願う。

著者プロフィール

竹本宗一郎(映像プロデューサー)

1968年東京生まれ。1991年大阪芸術大学芸術学部卒業。 東京吉祥寺の映像制作会社ZERO CORPORATION代表取締役。自然をフィールドにした様々な映像を制作。特に超高感度カメラによる天体撮影に精通し、CMや番組、科学館、博覧会など向けの映像を手がける。また月刊天文ガイド「ASTRONOMY VIDEO」連載のほか、「天体ビデオ撮影マニュアル」「天体ビデオ撮影入門」や「コンパクトデジタルカメラで野鳥を撮ろう!」などの著書も執筆。

◇ このコンテンツは「スーパー超高感度カメラNC-R550aシリーズ」のウェブサイトに掲載されたものです。なおNC-R550aシリーズは2013年8月末を持ちまして販売を終了いたしました。