超高感度撮影テクニック

EMCCDがとらえる宇宙線

映像プロデューサー:竹本宗一郎(ZERO CORPORATION

スーパー超高感度カラーテレビカメラ「NC-R550a」や「NC-R550n」で超高感度撮影をしていると、稀に白や赤、青といった点状の閃光ノイズがモニター画面に現れることがある。 カメラのスルー映像で見えることからビデオテープのドロップアウト現象でないのは確か。もちろん機械的なトラブルでもない。それは極々小さく、位置もタイミングもランダムなものだ。ほんの一瞬だけ画面に現れ、消えてしまうこのノイズは、一体なんなのだろうか?

その正体は、なんと「宇宙線(Cosmic rays)」だ。

宇宙線とは?

宇宙には、超新星爆発や太陽フレア(表層爆発)などで発生した高エネルギーの粒子が飛び交っている。これが宇宙線と呼ばれる宇宙放射線だ。

実は、宇宙線は絶え間なく地球の大気中にも降り注いでおり、我々も日常的に宇宙線にさらされているがその量はわずかだ。
しかし高度が高くなると宇宙から飛来する宇宙線が強くなるため、例えば上空およそ400 kmを飛行するISS(国際宇宙ステーション)では、わずか2日間で、地上で自然放射線により被爆する年間被爆量に匹敵する被爆を受けるという。
人体や電子機器へ影響をおよぼす宇宙放射線の存在は決して無視できない。

宇宙線の影響を受ける撮影機材

我々一般人が宇宙ステーションに登場する可能性は今のところ限りなくゼロなので、宇宙線とは無関係かといえばそうともいえない。
海外ロケでは飛行機に乗って高度1万メートル以上の高度を飛行し移動することになるが、この間になんと地上のおよそ100倍もの宇宙線を浴びているという。長距離かつ高緯度付近のフライトでは、手荷物としてキャビンに持ち込んだ機材はもちろん、貨物室に預けた機器にも容赦なく宇宙線が降り注ぐ。運悪くカメラのCCDに宇宙線が衝突すれば、極稀ではあるが画素欠損が発生することもあるのだ。この宇宙線を防ぐ効果的な方法は今のところないといわれている。
余談だが、放射線医学総合研究所によると、東京とニューヨーク間を10回往復した場合、地上で1年間に浴びる自然放射線と同程度の被爆を受けることになるという。

宇宙線を顕在化する圧倒的な超高感度カメラ

地上に飛来したわずかな量の宇宙線でさえ、その衝突の瞬間を可視化してしまうスーパー超高感度カラーテレビカメラシリーズ。その圧倒的な高感度性能はこんな現象からも実感できる。

ところでスーパー超高感度カラーテレビカメラシリーズのカメラは、万一宇宙線による画素欠損が発生した場合でも、搭載されたソフトウエアの処理で隣り合わせた画素によって自動的に補間されるようになっているため、短期的には全く神経質になる必要はないのでご安心を。

著者プロフィール

竹本宗一郎(映像プロデューサー)

1968年東京生まれ。1991年大阪芸術大学芸術学部卒業。 東京吉祥寺の映像制作会社ZERO CORPORATION代表取締役。自然をフィールドにした様々な映像を制作。特に超高感度カメラによる天体撮影に精通し、CMや番組、科学館、博覧会など向けの映像を手がける。また月刊天文ガイド「ASTRONOMY VIDEO」連載のほか、「天体ビデオ撮影マニュアル」「天体ビデオ撮影入門」や「コンパクトデジタルカメラで野鳥を撮ろう!」などの著書も執筆。 業界では稀なナイトネイチャーカメラマンとして活躍中。

◇ このコンテンツは「スーパー超高感度カメラNC-R550aシリーズ」のウェブサイトに掲載されたものです。なおNC-R550aシリーズは2013年8月末を持ちまして販売を終了いたしました。