超高感度撮影テクニック

KiPROを使ったフィールドレコーディング

映像プロデューサー:竹本宗一郎(ZERO CORPORATION

ネイチャー撮影用スーパー超高感度カラーテレビカメラ「NC-R550n」を使った撮影では、アナログコンポーネント信号を直接入力できるフィールド収録デッキとしてDVW-250(デジタルベータカム)やDSR-50(DVCAM)などを利用することが多い。
今回は、カムコーダーのテープレス化が急激に進んでいる現状を踏まえ、NC-R550nと組み合わせて運用できるファイルベースのフィールドレコーディングシステムのひとつをご紹介しよう。

ファイルベースビデオデバイス「KiPRO」

2009年10月にAJA Video Systems Japanから発売された「KiPRO」は、カメラからの信号をダイレクトでApple ProRes 422コーデック録画が可能なハードディスクタイプのファイルベースビデオデバイス。豊富なアナログ/デジタル入出力を搭載しており、様々なソースを10ビットのApple ProRes 422コーデックで記録できる高画質レコーダーとして注目されている。BNC3本でアナログコンポーネント信号を直接入力できるため、NC-R550nとの組み合わせとしても最適な機器だ。

KiPROを組み合わせた収録システム

KiPROとNC-R550nの接続は、以前ご紹介した小型プッシュプルコネクタ → BNCプラグ3本のカスタムケーブルを使用する。
KiPROのメニュー設定は非常に簡単。KiPRO本体の設定に関しては「CONFIG」、記録データに関する設定は「MEDIA」メニューからそれぞれ行うことが出来る。設定操作も「SELECT」ボタンと「ADUST」ボタンを押していくだけなので、初めてでも直感的に操作できる。
「CONFIG」の主な設定項目としては、ビデオフォーマットや出力信号などの設定、タイムコード関連など。また「MEDIA」では、データのエンコーディングタイプの選択のほか、記録するClipの細かいパラメータ設定が可能。録画や再生は従来のデッキ同様のプレーヤーボタンを操作するだけだ。

ファイルベースビデオデバイスの運用性

ここ1年でカムコーダーのテープレス化は一気に進んだ。発売されるカムコーダーの新製品は、ほぼすべてデータ記録仕様といっていい状況にある。
ファイルベースのレコーディングで最も恩恵を感じるのは、現場ですぐに映像のプレビューや削除が可能なこと。テープのような頭出しが必要ないため、プレビュー後に誤って収録映像を上書きしてしまう心配もない。テープ記録時につきものだったドロップフレームが発生しないのも大きなメリットだ。
また収録後すぐにKiPROのHDDをMacにつないでデータ転送すれば、現場でバックアップを作ることができる。もちろんHDDをMacにつなげば、そのままFinal Cut Proを使ったビデオ編集も可能だ。

NC-R550nによるハイビジョン収録も可能

長年テープを使い続けてきた放送業界では、まだテープレス収録への抵抗も大きいが、プロの世界でもフィルムカメラがデジタルカメラに置き換わったように、近いうちにその流れが本流になることは確実だろう。
これまでも多くのフィールド用のファイルベースビデオデバイスが発売されているが、なかでもアナログコンポーネント信号を直接入力できるKiPROは非常に稀な存在だ。注目すべきはKiPROのアップコンバータ機能を利用すればNC-R550nでHD(1080i)収録を行うことも可能な点。もちろん他のハードウエアの追加なしで、だ。さらに、これまで撮りためたSDフォーマットのビデオテープも、再生デッキを介してKiPROにつなげれば、HDへのメディアコンバータとしても利用できるため、NC-R550nユーザーにとってはメリットが大きい機材のひとつといえるだろう。

著者プロフィール

竹本宗一郎(映像プロデューサー)

1968年東京生まれ。1991年大阪芸術大学芸術学部卒業。 東京吉祥寺の映像制作会社ZERO CORPORATION代表取締役。自然をフィールドにした様々な映像を制作。特に超高感度カメラによる天体撮影に精通し、CMや番組、科学館、博覧会など向けの映像を手がける。また月刊天文ガイド「ASTRONOMY VIDEO」連載のほか、「天体ビデオ撮影マニュアル」「天体ビデオ撮影入門」や「コンパクトデジタルカメラで野鳥を撮ろう!」などの著書も執筆。 業界では稀なナイトネイチャーカメラマンとして活躍中。

◇ このコンテンツは「スーパー超高感度カメラNC-R550aシリーズ」のウェブサイトに掲載されたものです。なおNC-R550aシリーズは2013年8月末を持ちまして販売を終了いたしました。