超高感度撮影テクニック
Bioluminescent Bay〜真夜中の青い海を撮る〜その4』
ピロディニウムの青い光をどう見せるか?
翌日から、雨の日以外は毎晩モスキート湾に繰り出すことになった。
ピロディニウムの青い光をとらえることができることは確認できた。あとはその青い光のディテールをどんなシチュエーションで表現していくかが重要だ。
まず、スタッフの一人がシュノーケルとマスク、フィン(足ヒレ)を装着し、ピロディニウムの海に飛び込んでみた。その瞬間、青く輝く巨大な水しぶきがあがった。
水中で手足を動かすたびに、漆黒の海水がふわりと青白く光り、やがて闇のなかに消えていく…。水中に潜って激しい動きをすると、なんともいえない神秘的な光の固まりが現れた。
海水からボートにあがれば黒いTシャツが青く光っていた…。
深夜のモスキート湾は、不思議で満ちあふれていた。
翌日、スタッフたちでアイディアを出し合いながら、バケツやジョウロ、プール掃除用の網、ハタキ、水槽などの様々な小道具を買い込み、それをモスキート湾でひとつずつ試してみた。
なかでも面白かったのは、走るボートからプール掃除用の網を海面に差し込んだときにできる泡を巻き込んだ発光だった。
ピロディニウムが小さな泡の一つ一つにまで入り込み、キラキラと青く発光する。まるで輝く光の粒を手に取っているような光景だった。
ピロディニウムの輝きが消える
好天が続き新月が近づくにつれ、青い光は徐々に明るくなっているのを感じはじめていた。
地元のガイドによると、雨や強い風が続くとピロディニウムの光は極端に弱くなり、逆に穏やかな晴天が続くと発光は強くなるという。
他にも影響を与えるものがあった。
月明かりと街明かりだ。
それらの光源が海面を照らし、ピロディニウムの淡い光をかき消してしまう。
星空でも問題となっている光害の影響だ。
昔はもっと青く輝く海だった、と地元の人はいう。
海水温度の変化や湖畔の街灯、そして立ち並ぶ住宅の明かりの影響など、ここ数年の間にモスキート湾の青い輝きは、一気に弱くなってしまったというのだ。