超高感度撮影テクニック

Bioluminescent Bay〜真夜中の青い海を撮る〜その3』

映像プロデューサー:竹本宗一郎(ZERO CORPORATION

シンプルでコンパクトなパッキング

今回、ヴィエケス島のロケのために用意した機材と荷物は、優に300キロを超えるものだった。

海外ロケでは、機材の安全を考慮して可能な限り機内持ち込みにするのだが、少し前にリチウムイオンバッテリーの貨物室預けが禁止となったため、大量のバッテリーも手荷物として機内に持ち込まなければならない。
そんななか、NC-R550nフィールドスーツシステムは、レンズを含め必要な機材のほとんどがボストンバックほどの大きさのカムコーダー用カメラバックに収まってしまう。
イメージインテンシファイア(I.I.)やHARPなど撮像管を使ったカメラシステムとは比べ物にならないこの手軽さは、これまでの超高感度カメラによる特殊撮影のイメージを覆すものだ。

ヴィエケス島 モスキート湾へ

ネイチャー撮影用スーパー超高感度カラーテレビカメラ「NC-R550n」フィールドスーツシステムがヴィエケス島に持ち込まれたのは2009年2月中旬のことだった。

2月の新月は日本時間で25日にあたる。その間に様々なテスト撮影を行い本番に挑むことになる。

我々はまずテスト撮影のためにモスキート湾に向かった。

モスキート湾での撮影は、電気モーター駆動のボートをチャーターして行われた。機材を乗せたボートが湖畔をゆっくりと離れていく。湖畔の街明かりが海面を照らし、そこはごく普通の見慣れた夜の海だった。街明かりを避けるように奥へと進んだ。

あたりが真っ暗になると、ボートのスクリュー付近の白い泡立ちに違和感を覚えるようになった。機材セッティングを終えたNC-R550nのレンズを、まずはその白い泡の部分へ向けてみることにした。すると・・・

青い! 青く光っている!

スタッフの一人が声をあげた。

ボートのスクリューから後方へ伸びる青い光のトレールが、NC-R550nのモニターに初めて映し出された瞬間だった。肉眼では見ることが困難な青い波の複雑なうねりさえ、はっきりと確認することができる。

NC-R550nの設定は、ほぼ星空を撮影するのに近いパラメータを示していた。これはピロディニウムの青い光が極めて低照度であることを意味していた。

現地のボートクルーによると、今夜のコンディションは、ピークの6〜7割ほどしかないという。それでも、超高感度カメラNC-R550nがピロディニウムの青い海を鮮明に映し出した驚きと感動は、ロケの成功を確信するに十分なものだった。

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