ヘルクレス座を見つけよう

ヘルクレスは、ギリシャ神話の中でも最も有名な英雄の一人。ディズニーのアニメなどにもなりましたね。皆さんも「怪力ヘラクレス(ヘルクレス)」なんて言葉をご存知ありませんか?だというのにヘルクレス座は、明るい星もなく、あまり目立たない星座なんです。そんなわけで、神話の華やかさとは裏腹に、星座としての知名度はイマイチ…。
それでも探してみると、なるほどそれらしい姿に見えるんですよ。せっかくですから、この英雄の姿を夏の夜空で探してみてください。見つけ方は簡単です。

これは夏の夜に見られる星空です。
ヘルクレス座の目印は、へびつかい座の上にの方に見える「H」の字のような星の並び。
この図だとちょっとゆがんで、どちらかというとさかさまの「K」みたいに見えるかも。

ヘルクレス座の探しかた

マウスを重ねてみてください。Hの字、見つけられましたか?ヘルクレス座は頭の上の方に見えているので、上の図ではゆがんで描かれています。下の図の星座線を参考にすると、よりわかりやすいかもしれません。 この並びをHと見るのは、ヘルクレス(Hercules)の頭文字にちなんでいるらしいですが、…でもHの字がちょっと身をよじったような感じですね(笑)

ヘルクレス座のお話

さて、ヘルクレス座の星の並びは右の図の通り。目印のHの字がどこにあたるか、わかりますか?
こうして星をつないで見ると、確かに人のように見えますよね。明るい星がないので、手足はちょっとつなぎにくいと思いますが、頭から胴体にかけての星の並びは案外わかりやすいですよ。

ヘルクレス座は、右手に棍棒を振り上げた姿で星座になっています。左手に持っているのは摘み取ったお花…ではなくて、切り取ったヒドラの首(※下記参照)!いかにも豪傑らしい姿?ですよね。でも、ひざを折り曲げてちょっと窮屈そうかな?その姿の通り、頭にあたる星には、ラス・アルゲティ(Ras Algethi)、 ひざまずくものの頭という意味の名前がつけられているんですよ。…あ、このホームページの星座を順番にご覧のアナタはもうお気づきですね?似たような名前をどこかで聞きましたよね。…そうそう、へびつかい座の頭の星です。あちらはラス・アルハゲ(ヘビを持つものの頭)でしたね!

ヘルクレスとへびつかい実はこの二つの星、左の図のように、隣り合った星なんです。ヘビを持つものひざまずくものが、頭を寄せ合っているというわけ。…男二人が寄り添う姿は、想像するとナンすが…(ウププ)  でも、知っておくと、星座を探すときの役に立つかもしれませんよ。 ヘルクレス座の「H」の字が探しにくいときには、さそり座→へびつかい座→ヘルクレス座、と星座をたどると見つけやすいと思います。
ちなみにヘルクレスは、へびつかい座のアスクレピオス同様、いて座のケイローンを師に、立派な英雄に成長したのだそうです。…だからといってこんなところでまで弟子二人でくっついていなくてもいい気もしますが…(笑)

さてそれでは、そのヘルクレスにはどんな神話が伝わっているのでしょう?(…実はヘルクレス座の神話はすごく長ーーーいお話なんです!今回はごく短くまとめましたので興味のある方は書籍などを調べてみてくださいね)

ギリシャ神話きっての英雄ヘルクレスは、神々の王ゼウスの血を引く若者でした。
母親はアルクメーネという女性でしたが、ゼウスの正妻ヘラは、夫と他の女性との間に生まれたヘルクレスをそれを快く思いません。いっそ殺してしまおうと、まだ赤ん坊のヘルクレスのもとに毒蛇を送り込んだのです。ところがヘルクレスは、生まれついての怪力で、その蛇をつかんで握りつぶしてしまったといいます。
しかし、ヘラの怒りはこれで治まったわけではありませんでした。(そりゃそうだ)

ヘルクレスはやがて立派に成長し、ギリシャで並ぶもののない力持ちとなりました。ところが、あるときヘルクレスは、最愛の妻と子を火に投げ込んで殺してしまったのです。ヘラの呪いが狂気の女神を取り付かせ、ヘルクレスを乱心させたのでした。

この罪を償うため、ヘルクレスは誰も成し遂げたことのない12の冒険に挑まなければなりませんでした。その中の一つが、ネメアの森に住む化け獅子(しし座)の退治。剣も矢も通さない毛皮を持つ人食いライオンです。
ヘルクレスは、ライオンに矢が立たないことを知ると、巨木を引き抜いて作った棍棒で力いっぱい殴りつけましたが、その棍棒さえあっけなく折れてしまいます。そこで今度は、ライオンの首を力まかせに締め付けたのです。ヘルクレスの怪力で締め上げられては、さすがの化けライオンもどうすることも出来ません。とうとう息耐えてしまいました。

こうしてライオンを退治すると、二つ目の冒険はアミュモーネの沼に住むヒドラ(うみへび座)退治です。ヒドラは、九つの首から毒気を撒き散らす恐ろしい怪物でしたが、ヘルクレスは恐れることなく立ち向かい、その首を片端から切り落としてしまいます。
ところが、切り口からは、新しい首が二つ生えてくるではありませんか!これではいくら切ってもきりがありません。(シャレじゃありませんヨ!)
そこでヘルクレスは、切り口をすぐさま火で焼き、首が生えないようにしてしまいました。そして、最後に一つ残った不死身の首は、巨大な岩で押しつぶして地面に埋め、ようやく退治することが出来たのです。

実はこの戦いの途中、ヒドラの仲間の化けガニ(かに座)がヘルクレスの足をはさんで加勢するのですが、ヒドラとの戦いに忙しいヘルクレスに、あっという間に踏み潰されてしまいます。(登場の場が少なくてかわいそう?)

こうして困難を次々と克服し、十年かけて全ての冒険を成し遂げたヘルクレスですが、生涯ヘラの呪いに苦しめられ、やがては非業の最期を迎えます。しかし、その活躍を惜しんだゼウスの手により、天に上げられ、星座となりました。

ところが、ヘラの呪いはその後も続いたのです!
ヘルクレス座は、ギリシャ神話随一の英雄にしては、ずいぶんと窮屈そうな姿をしていますよね?実はこれも、ヘルクレスを憎むヘラの仕業だともといわているんですよ。

さて、この神話を知ってからあらためて星空を見ると、今までとは違った見方が楽しめるんですよ。下の図にマウスを重ねてみてください。ヘルクレス座が東から上ってくると、ヘルクレスを恐れる怪物たち(かに座しし座うみへび座)は、急いで西の空に逃げていくんですよ。
※下図のヘビのような星座がうみへび座(ヒドラ)です。星座絵では首は一つしかありませんが、最後に残った首なんでしょうかね?

ヘルクレス座としし・かに・うみへび座の動き
マウスを乗せてちょっとまってね。

ヘルクレスと怪物たち

マウスを重ねると、5時間分の星の動きが見られます。こうしてみると、星空の動きをなかなか上手に取り入れた星座と神話だと思いますが…

でもワタクシ、常々疑問に思っているのですが…ヘルクレスは怪物たちを後ろ向きで追いかけているんでしょうかね?(笑)まあそんなことはどうでもいいんですけど。