窓の外の、まるで花火でいっぱいのような、あまの川のまん中に、黒い大きな建物が四棟(むね)ばかり立って、その一つの平屋根の上に、眼もさめるような、青宝玉(サファイア)と黄玉(トパーズ)の大きな二つのすきとおった球が、輪になってしずかにくるくるとまわっていました。
宮沢賢治:銀河鉄道の夜
夏の大三角を形作る星の中で、はくちょう座のデネブはもっとも東寄りです。そのため、夏の空高く昇るのは、こと座やわし座よりもちょっと遅め。でも星座としては、一番見ごたえがある形をしているんですよ!下の図は、夏の大三角が南中するころの星座の配置です。
これは夏の大三角が南中するころの星空です。
はくちょう座のボタンを押すと、星座の形がわかりますよ。
夏の大三角が南中するのは8/20なら21:30ころ、8/30なら21:00ころです
はくちょう座は、悠々と翼を広げる大きな星座。晩夏の夜、頭の真上に見えるこの星の並びは、本当に見事ですよ!
今回は翼の左右の星までつないでいますが、十字型に見える部分だけをつないだものを、南天の南十字に対し北十字とも呼んでいます。宮沢賢治の「銀河鉄道の夜」にも登場しますよね!
はくちょう座の1等星デネブ(Deneb)は、アラビア語のめんどりの尾という意味の言葉が語源になっているそうですが、この白鳥、ギリシャ神話では大神ゼウスが変身した姿だと伝えているんですよ。めんどり(雌鶏)に変身…?ゼウスは性別も偽装しちゃうのかしら?
Denebという言葉自体は「尾」を表すもので、ほかにもこの名前を持つ星があります。しし座のデネボラ(Denebola)や、くじら座のデネブカイトス(Deneb Kaitos)にも、Denebが使われていますね。
白鳥のくちばしにあたる星は、アルビレオ(Albireo)。肉眼では一つの星にしか見えませんが、望遠鏡で見ると、黄色と青の二つの星が寄り添った二重星であることがわかります。宮沢賢治ファンの方はお気づきですよね?そう、この星が前出の銀河鉄道の夜に登場するアルビレオの観測所です。
窓の外の、まるで花火でいっぱいのような、あまの川のまん中に、黒い大きな建物が四棟(むね)ばかり立って、その一つの平屋根の上に、眼もさめるような、青宝玉(サファイア)と黄玉(トパーズ)の大きな二つのすきとおった球が、輪になってしずかにくるくるとまわっていました。
宮沢賢治:銀河鉄道の夜
こんな文を読むと、アルビレオが一体どんな星なのか興味が湧いてきますよね!機会があったらぜひ、望遠鏡でこの星を眺めてみてください。
はくちょう座の物語は、ふたご座の神話でご紹介していますので、興味のある方はそちらをご覧くださいね。