昔、地上に季節というものはありませんでした。女神デメテルの恵みによって、作物は一年中豊かに実り、人々は幸せに暮らしていたのです。
デメテルには、美しい娘ペルセポネーがいました(ギリシャ神話には美しい女性しか登場しませんなぁ…)。
二人は日々楽しく暮らしていましたが、あるとき、野に花を摘みに出かけたペルセポネーが何者かにさらわれ、行方不明になってしまいます。
あ、今回の犯人は、いつものゼウスではありません!真犯人は冥土(黄泉の国)の王ハデス。ペルセポネーを自分の妻に迎えようと、冥土へさらってしまったのです。
地下に連れ去られてしまっては、デメテルがいくら探しても見つかるはずがありません。やがてデメテルは、悲しさのあまり洞窟に引きこもってしまいました。
女神が姿を消すと、草木は枯れ、農作物は全く実らず、地上はすっかり荒れ果ててしまったのです。
このままでは、地上の生き物たちは死に絶えてしまいます。すべてをオリンポスから見ていたゼウスは、ハデスに、ペルセポネーを地上へ返すよう命じました。
冥土の王といえども、神々の王ゼウスに逆らうことはできません。ハデスはしぶしぶペルセポネーを地上へ返すことにしましたが、そのとき、さりげなくザクロの実を手渡しました。
実はこれは、ハデスの巧妙な罠でした。冥土のザクロ(一説には食べ物)を口にしたものは、冥土の住人になるという掟があるのです。しかし、何も知らないペルセポネーは、その実を口にしてしまいました。
こうしてペルセポネーは、母のもとへと帰りました。そして地上は緑を取り戻し、再び作物を収穫することができるようになったのです。
しかしペルセポネーは、口にしたザクロの実4粒分、1年のうち4か月を、冥土で暮らさなくてはなりません。
娘が冥土で暮らす4か月の間、デメテルは再び洞窟へこもるようになりました。そのとき地上は、女神の恵みのない寒く厳しい季節、つまり冬を迎えるのです。