オルフェウスは、ギリシャ一の竪琴の名手。オルフェウスの奏でる美しい琴の音色には、森の木々や動物たちさえうっとりと聞きほれるほどでした。
オルフェウスはやがて美しい森のニンフ(妖精)エウリディケを妻に迎え、幸せな毎日を送ります…が、しかーし!結婚してまもなく、エウリディケは毒蛇に脚をかまれ、あっけなく命を落としてしまったのです。
オルフェウスは、エウリディケの早すぎる死を受け入れられず、何とか妻を取り戻そうと一人冥土へ向かいます。
もちろん、死者ではないオルフェウスには、冥土に立ち入る資格はありません。行く先々で冥土の番人たちに道を阻まれるのですが、その度ごとにオルフェウスは竪琴をかき鳴らします。すると、誰もがその音色に心を打たれ、オルフェウスのために道を開けるのでした。
こうしてオルフェウスは、冥土の王ハデスのもとにたどり着きました。(そんなユルい警備でいいのか!?ハデス!)
妻を思いながら奏でるオルフェウスの琴の音が、冥土に切なく響き渡ります。この音色にはハデスさえもが心を動かされますが、そこは冥土の王、二つ返事で死んだエウリディケを返すわけにはいきません。
しかしここに思わぬ援軍が!ハデスの妻、ペルセポネーです。
ペルセポネーは、自身も愛する母と引き離された身(おとめ座参照)、オルフェウスの気持ちに何とか報いてやりたいと、ハデスを説き伏せます。そしてついにオルフェウスは、エウリディケを地上に戻す約束を取りつけたのです。
しかしこの約束には条件がありました。それは「地上にたどり着くまでの間、絶対に後ろを振り返ってはならない」というものでした。
オルフェウスは、来た道を一人引き返します。その後ろには、エウリディケがついてきているはず。しかし背後からは、足音も、人の気配さえも感じられないのです。
地上が近づいてくるにしたがって、オルフェウスは不安にかられるようになりました。そして地上の光が見えたそのとき、ついに我慢しきれず後ろを振り返ってしまったのです。
「どうして振り返ってしまったの?」
そこには悲しみに満ちたエウリディケの姿がありました。ハデスとの約束どおり、エウリディケは、あっという間に冥土に引き戻されてしまったのです。
オルフェウスは再び冥土に戻り、狂ったように琴をかき鳴らしますが、もう相手にしてくれる者はありません。
こうしてオルフェウスは、エウリディケを永遠に失ったのです。
オルフェウスは以後、二度と琴を奏でることはありませんでした。オルフェウスの死後、その琴だけが天に上げられ、星座になったということです。